民法短答対策(弁済による代位②)
前回は、弁済による代位の効果(501条)について解説しました。501条の理解を確実なものにするために、今回は短答の過去問を使って演習をしようと思います。
Q. 900万円の主たる債務について二人の連帯保証人があり、そのうちの一人が物上保証人を兼ねている場合、連帯保証債務のみを負担している者が全額弁済をすると、この者が法定代位する債権額は600万円である。×(23-22-イ)
【解説】
「主たる債務について二人の連帯保証人があり、そのうちの一人が物上保証人を兼ねている」ということですから、連帯保証人の1人が物上保証人でもあるケース、すなわち、二重資格者が登場するケースです。二重資格者はこれまで解説したように、1人としてカウントします。したがって、以下のようにカウントすることになります。
A:連帯保証人 → 1人
B:連帯保証人 + 物上保証人 → 1人
ですから、501条5号本文を適用して、債権額900万円を人数2人の頭割りにします。
よって、1人あたりの負担金額は「900万円÷2=450万円」となりますから、全額弁済をした保証人は450万円の代位をすることができます。
Q. 1000万円の主たる債務に対する連帯保証人と物上保証人が一人ずついたところ、連帯保証人が債権者に弁済をする前に、物上保証の目的不動産が三人の共同相続人により相続され共有となった場合、その後連帯保証人が全額弁済をすると、この者が法定代位する債権額の合計は750万円である。◯(23-22-ウ)
【解説】
このケースでは、物上保証の目的物が3人の共同相続人に相続され共有となっています。ですから、物上保証人は「1人→3人」とカウントすることになります。
A:連帯保証人 → 1人
(Bを相続)物上保証人B1・B2・B3 → 3人
保証人と物上保証人間は501条5号で規定されているように、その数に応じて頭割りをしますから、1人あたりの負担金額は「1000万円÷4=250万円」となります。
よって、保証人は全額弁済をすると、750万円(1000万円ー負担分250万円)の代位をすることができます。
Q. AのBに対する1200万円の債権について、保証人C、物上保証人D(担保物の価格900万円)、物上保証人E(担保物の価格300万円)が存在する場合、C、D及びEの間における弁済による代位の割合は、2対3対1になる。◯(28-20-エ)
【解説】
このケースでは、保証人と物上保証人が登場しますから、501条5号により処理します。まず、本文より、保証人と物上保証人の数に応じた頭割りですから、1人あたりの負担金額は「1200万円÷3=400万円」になります。
もっとも、同号ただし書より物上保証人間では、各自の担保物の価格割合についてのみ代位することになります。このケースでは、物上保証人DとEの担保物は「D:E = 900万円:300万円」ですから、2人の担保物の価格割合は「D:E = 3:1」となります。
したがって、1200万円から保証人Cの代位額400万円を引いた、800万円の代位ができます。Dには800万円の3/4にあたる600万円、Eには800万円の1/4にあたる200万円について代位できることになります。
よって、それぞれの負担金額は「C:D:E = 400万円:600万円:200万円」ですから、代位割合は「C:D:E = 2:3:1」となります。