民法改正7(解除)

1 概要

①解除の理解

②解除の方式

 *改正があった全ての箇所に言及しているわけではありませんのでご注意ください。

 

2 内容

①解除の理解:債務者の帰責事由が要件ではなくなった!

 現行法は、現541条から543条において、当事者の債務不履行を理由に契約の解除が認められる要件を定めています。通説によると、債務者の帰責事由が債務不履行解除の要件となります。これは、契約の解除を債務不履行の効果の1つと位置付けられており、債務不履行による損害賠償請求と同じ要件が契約の解除にも妥当すると考えられているからです。

 

 しかし、債務者の帰責事由を要件とする見解に対しては、「契約上の利益の実現をめざす損害賠償とは異なり、契約の解除は当事者に契約から離脱することを認めるものであるから、両者は債権者の救済手段としての性格を異にする。債務が履行されず債権者が契約上の利益を手にすることができない場合は、債務者の帰責事由の有無にかかわりなく、契約を解除して契約から離脱することを債権者に認めるべきである。」という批判がありました。

 

 そこで、この議論をベースに改正法では、「契約の解除は契約からの離脱を認める制度であるため、損害賠償とは異なった要件が妥当する」という理解に立って、解除の要件に関する規定が置かれています。

 具体的には、改正法は債務者の帰責事由を契約の解除の要件とはしない立場を採用しています。現543条ただし書「ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りではない。」に対応する定めが改正法では置かれていません。改543条は債務者の帰責事由が契約の解除の要件ではないことを前提とした定めです。

 

②解除の方式:催告による解除催告によらない解除を区別して規定!

・催告による解除(改541条)

 改541条は債務不履行に直面した債権者が債務の履行を催告して契約の解除をする場面の規定です。

 催告による解除の場合、契約をした目的の達成の可否ではなく、債務不履行が軽微であるか否かが解除が認められるかの基準になります。具体的には、同条ただし書において、催告期間が経過した時における債務の不履行がその契約および取引上の社会通念に照らして軽微である場合には契約の解除が認められないと新しい規定が置かれました。

 

・催告によらない解除(改542条)

 改542条1項は、債権者が催告をすることなく契約の解除をするできる場面の規定です。

 催告によらない解除の場合、契約をした目的の達成の可否が解除が認められるかの基準となります。

 具体的には、同項各号で契約をした目的を達成できないと考えられる場合が規定されており、それに該当すれば催告によらない解除が認めらることになります。

 たとえば、債務の全部の履行が不能である場合(同1号)というのは、契約をした目的を達成できない典型例として規定されています。また、債務者が履行を拒絶する意思を明確に示した(2号)ならば、もはや契約をした目的を達成することができません。