民法短答対策(共同抵当③)

 前回までの2つの記事で、共同抵当の際の配当方法について解説しました。

 

www.obayashi-nao.work

 

 

www.obayashi-nao.work

 

 今回は、実際に司法試験で出題された短答問題を用いて、前回までのおさらいをしたいと思います。

 

【問題】

(22-13)

  AのBに対する1000万円の債権を担保するために甲土地及び乙土地に第一順位の抵当権が設定された場合に関する次の1から4までの各記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものを2個選びなさい。なお、各記述において、競売の結果として債権者に配当することが可能な金額は、甲土地及び乙土地のいずれについてもそれぞれ1000万円であり、また、各債権者が有する債権の利息及び損害金は考慮しないものとする。

 

 1. 甲土地及び乙土地をBが所有し、甲土地にCが1000万円の債権を担保するために第二順位の抵当権の設定を受けている場合、甲土地及び乙土地が同時に競売されたときは、Cは1000万円の配当を受けることができる。×

 2. 甲土地及び乙土地をBが所有し、甲土地にCが1000万円の債権を担保するために第二順位の抵当権の設定を、乙土地にDが1000万円の債権を担保するために第二順位の抵当権の設定をそれぞれ受けている場合、甲土地のみが競売されたときは、その後の乙土地の競売の際に、C及びDはそれぞれ500万円の配当を受けることができる。○

 3. 甲土地をBが、乙土地をEが所有し、甲土地にCが1000万円の債権を担保するために第二順位の抵当権の設定を、乙土地にDが1000万円の債権を担保するために第二順位の抵当権の設定をそれぞれ受けている場合、甲土地のみが競売されたときは、その後の乙土地の競売の際に、Cは配当を受けることができず、Dは1000万円の配当を受けることができる。○

 4. 甲土地をBが、乙土地をEが所有し、甲土地にCが1000万円の債権を担保するために第二順位の抵当権の設定を、乙土地にDが1000万円の債権を担保するために第二順位の抵当権の設定をそれぞれ受けている場合、乙土地のみが競売されたときは、その後の甲土地の競売の際に、Cは1000万円の配当を受けることができ、Dは配当を受けることができない。×

 

【解説】

1. このケースは、同時配当ですから、392条1項が適用されます。具体的には、甲と乙の価格はともに1,000万円ですから、「甲:乙=1:1」となります。ですから、Aは甲から1/2、乙から1/2の配当を受けます。つまり、甲から500万円、乙から500万円の配当を受けることになります。

 

2. このケースは、甲が先に競売にかけられたという異時配当の場合です。まずAは甲から1,000万円全額の配当を受けます(392Ⅱ前)。そして異時配当の場合は、後順位者の配当を392条2項後段で処理します。具体的には、上の1のケースと同じ結果をめざします。本件では仮に、同時配当だったらら、C・Dはそれぞれ500万円ずつ配当を受けることができたわけですから、甲の第二順位抵当権者Cは500万円の限度で、乙に対するAの抵当権を代位することができます。したがって、乙の競売の際にC・Dはそれぞれ500万円の配当を受けることができます。

 

3. このケースは甲土地が債務者B所有、乙土地が物上保証人E所有、すなわち、物上保証人が登場するケースです。本件では、債務者B所有の甲が先に競売されています。当然、Aは甲から1,000万円全額の配当を受けることができます。

 ここで問題は、後順位者Cが上の2のように乙に対するAの抵当権を代位行使できるかです。前回までに解説したように、物上保証人より債務者所有の不動産から先に弁済されるべきですから、後順位者Cは物上保証人E所有の乙競売の際に、392条2項後段に基づき代位することはできません。

 その結果、Cは配当を受けることができず、Dは1,000万円の配当を受けることができます。

 

4. このケースは、物上保証人E所有の乙が先に競売された場合です。まず当然ですが、Aは乙から1,000万円全額の弁済を受けることができます。

 そして、これまでの解説どおり物上保証人Eが弁済による代位により、甲に対するAの抵当権を取得します。ここで、問題は後順位者Dの存在です。前回の解説どおり、物上保証人所有の不動産を目的とする後順位抵当権者は物上保証人が弁済による代位により取得する抵当権を「あたかも物上代位するように」行使することができますから、後順位者Dは物上保証人Eが取得した抵当権を行使することができます。

 その結果、甲の競売の際に、Dは1,000万円の配当を受けることができますが、Cは配当を受けられません。

 

 

 以上で、この問題の解説を終わります。共同抵当の配当方法は、ややこしく、後回しになりがちな分野ではありますが、一度理解してしまえば、数字が変わっても間違えることは少ないと思います。一連の解説を読んで、自分で数字を変えながらどのような結論になるかを考えてみてください。理解につながると思います!