夏休み突入!民訴法の学習方法

1 はじめに

 前回の商法(会社法)に引き続き、今回は論文民訴法対策のための学習方法を書きたいと思います。

www.obayashi-nao.work

 

2 論文民訴の考え方

 何度も繰り返しますが、インプットはアウトプット(論文)を前提として行うことが大原則ですから、まずは論文での民訴法の考え方を確認します。

 

 そもそも民事訴訟は原告が求める権利ないし法律関係(=訴訟物)の存否を判断するものです。ですから、民訴法の論文試験でもまずは訴訟物を特定するところからスタートします。

 その訴訟物を起点として民事訴訟は「訴訟物レベル」→「主張レベル」→「立証レベル」という3つのレベル(階層)に分けることができます。それぞれのレベルによって適用される主義・原則や審理が異なります。そして、論文試験では、当該主義・原則に違反がないかを問われることが多いです。ですから、下の図のようなイメージを持って問題となっている主義・原則や審理がどのレベル(階層)の話かを正確に認識しておくことが必要です。

 

 例えば、(弁論主義第1テーゼ違反を理由として)「裁判所の判決は適法か。」のような出題がされます。この問題ですと、主張レベルでの弁論主義が問題となります。

 考え方としては訴訟物を特定して、問題となっている事実が弁論主義の適用される「主要事実」に該当するかを検討することになります(主張レベル)。このように訴訟物を起点として問題を解いていくことになります。

f:id:obayashi_nao:20170802120824p:plain

 

*補足

 要件事実と主要事実の関係がわかりにくいと思うので補足します(論文民法の考え方の補足も兼ねる)。一言でいうと、「抽象的な要件事実に該当する具体的事実が主要事実」です。

  それぞれの定義を書くと

「要件事実」とは法律効果の発生、変更、消滅を基礎付ける抽象的類型的事実である。

「主要事実」とは法律効果の発生、変更、消滅を基礎付ける具体的類型的事実である。

 

 それぞれを法的三段論法に引き直すと以下のようになります。

f:id:obayashi_nao:20170802122602p:plain

 

3 インプット(基本書の通読)のポイント

 インプットのポイントは、上記図のイメージを持って、読んでいる箇所・単元がどのレベルのどの主義・原則かを意識して読むことです。漫然と基本書を読んでいては迷子になってしまいますから、必ず意識しましょう。

 

 また既判力や弁論主義といった主義・原則はなかなかイメージが掴めないと思います。ですから、基本書を読みながら具体的な実際にありそうな訴訟をイメージしましょう。

 たとえば、既判力。XからYへの所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求訴訟で請求棄却判決がされると、既判力は訴訟物である「所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権」の不存在という判断に生じるのか。でも、既判力が後訴に作用するのは、同一・先決・矛盾関係のいずれかにあたる場合だから、仮に後訴がXの所有権確認訴訟だったら既判力は作用しないよな‥‥という感じです。

 最初は基本書の例示をしっかりと理解するところからスタートしましょう!

 

4 さいごに

 では民訴法はこのくらいにします。

 告知ですが、民訴法の基本論点が網羅されている「ロープラ民訴」の解説講義を今週中にBexaからリリースします。一通りのインプットが終わって論文対策をしようと考えている方、民訴の理解をさらに深めたい方はぜひご検討ください。

 次回は刑法について書きますので、また読んでください!

                                                     2017.8.2