民法改正3(代理行為)

1 概要

①復代理人を選任した任意代理人の責任(現105条参照) 

②代理権濫用の明文化(改正107条)

③無権代理人の責任(改正117条2項2号)

④その他

 ・代理人の行為能力(改正102条)

 ・表見代理規定の重畳適用を認める判例法理の明文化(改正109条2項、112条2項)

 

*改正があった全ての箇所に言及しているわけではありませんのでご注意ください。

 

 

2 内容

①復代理人を選任した任意代理人の責任(現105条参照)

 現105条は復代理人を選任した任意代理人の責任を軽減しています。しかし、復代理人を選任すると代理人の責任が軽減されることに妥当性はありません。

 そこで改正法では現105条が削除されます。ですから、復代理人を選任した任意代理人の責任の問題は債務不履行一般のルールに従って処理されることになります。

 

②代理権濫用の明文化(改正107条)

 現行法には代理人による代理権濫用があった場合について定めた規定がありません。代理権の濫用があった場合の処理について、判例は93条ただし書を類推適用して当該代理行為の効果を否定するとしています。この判例は受験生ならみなさんご存知だとおもいます。この判例法理が改正によって明文化されました。

 

③無権代理人の責任(改正117条2項2号ただし書)

  現行法の下では、無権代理の相手方は当該取引が無権代理であることについて過失があれば無権代理人に対して責任追及をすることができません。(現117条2項)。これは無権代理人に無過失責任を負わせる以上、相手方にも無過失を要求するという趣旨です。

 しかし、無権代理人が自らに代理権がないことを知っていた場合にまで相手方の無過失を要求すべきではないという批判がありました。

 そこで、改正により、無権代理人が自己に代理権がないことを知っていた場合には相手方に過失があっても無権代理人の責任が認められることになります(改正117条2項2号ただし書)

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④その他

 ・代理人の行為能力(改正102条ただし書)

 現102条は「代理人は、行為能力者であることを要しない」と定めています。ですから、未成年の親権者(法定代理人)が被保佐人であっても親権の行使を取り消すことができません。これでは未成年の保護という制限行為能力制度の目的が達成できません。

 そこで、改正102条ただし書は上のような場合には、法定代理人である制限行為能力者がした行為を取り消すことができると定めています。

 

 ・表見代理規定の重畳適用を認める判例法理の明文化(改正109条2項、112条2項)

  条文を参照。