民法改正2(法律行為)

1 概要 

①「意思能力」規定の創設(改正3条の2)

② 錯誤法

 ・「動機の錯誤」規定の創設(改正95条1項2号、2項)

 ・錯誤の効果が「無効」から「取消」になる(改正95条1項)

③ 意思表示の効力が否定される場合の第三者保護(虚偽表示以外)

④ 契約の効力が否定された場合の清算ルールの明文化(改正121条の2)

⑤意思表示の効力発生時期(改正97条)

*改正があった全ての箇所に言及しているわけではありませんのでご注意ください。

 

2 内容

①「意思能力」規定の創設(改正3条の2)

   「意思表示をした時」に「意思能力」を有しなかったときは、その法律行為は「無効」となります(改正3条の2)。

 

 ポイントは判断の基準時が「意思表示をした時」となること、効果が「無効」となることです。

 「意思能力」の定義規定が置かれることは見送られましたので、「意思能力」の解釈はいまだ問題となります。この解釈は大きくわけて以下2つの見解があります。

 ❶「意思能力」とは事理弁識能力である。

 ❷「意思能力」とはその法律行為をすることの意味を理解する能力である。

 

 

 ② 錯誤法

・「動機の錯誤」規定の創設(改正95条1項2号、2項)

  動機の錯誤に関する判例法理が明文化されました。要件は以下のとおりです。

  ❶「表意者が法律行為の基礎として事情(=動機)」に錯誤がある

       ❷ 動機の錯誤が「重要」である

       ❸ 動機が「法律行為の基礎とされていることが表示され」ている

 

・錯誤の効果が「無効」から「取消」になる(改正95条1項)

 現行法は錯誤の効果を「無効」と定めているが、改正法では「取消し」と定めます。もっとも、現行法の下で判例は「無効」を相対的無効と解釈していましたから、同改正は今までの判例を追認するものです。

 

 

③ 意思表示の効力が否定される場合の第三者保護(虚偽表示以外)

・心裡留保

 判例法理を明文化して、心裡留保による意思表示の無効は「善意」の第三者に対抗することができないと規定されます(改正93条2項)。

 

・錯誤と詐欺

 錯誤と詐欺による意思表示の無効は「善意」かつ「過失がない」第三者には対抗することができないと規定されます(改正95条4項、96条3項)。

 同改正は、現行法の下で(虚偽表示と比べて)比較的帰責性が小さい表意者の犠牲のもとで第三者が保護されるためには善意では足りず無過失まで要求すべきであるという議論が取り入れられたものです。

 

・虚偽表示 

 他方、錯誤や詐欺と比べて表意者の帰責性が大きい虚偽表示では、第三者は「善意」であれば保護されるとする現行法が維持されます。

 

 

④ 契約の効力が否定された場合の清算ルールの明文化(改正121条の2)

  現行法の下では、契約関係を清算する場合の規定がなかったため、不当利得で処理されていました。改正法では、契約関係の清算として、給付を受けた者は「相手方を原状に復させる義務を負う」ことになります。

 

 

⑤意思表示の効力発生時期(改正97条)

 解説は割愛